脳腫瘍(神経膠腫)手術後の高次脳機能障害の日々

31歳11ヶ月で左前頭葉神経膠腫の手術を経験。その後の日常を気まぐれで更新。以下URLは病気関係の本棚です。https://booklog.jp/users/cloverbk/all?category_id=3559096&status=all

術後367日後

手術から1年以上が経過した。

1年前、9/7に、手術をした病院で悪性脳腫瘍の疑いがあると言われた時、咄嗟に「手術をしなければどうなるんですか」と聞いたところ「自殺と一緒だよ」と言われた。さらに手術後も抗がん剤治療と放射線治療で6週間の入院が必要だろうと言われた。

開頭手術が単純に怖いというのもあり「手術をするかどうか明日までに連絡します」ととりあえず伝えて、タクシーに乗って家まで帰った。タクシーの中で何も知らない運転手が、まさかこんなに若いのに悪性脳腫瘍の宣告を受けた人が乗客だとは思わなかったのか、他愛もない話を何度も振ってきたが、何も話す気になれなかったので、最後まで無言で過ごした。

家に帰りドアを開けるとすぐに、前月に購入し組み立てていた健康ぶら下がり器に首吊りロープをかけて首を吊ろうとした。はっきりと覚えていないが3〜4度試したと思う。「完全自殺マニュアル」には首吊り自殺をした場合の時間経過とともに起きる症状が具体的に書かれてあった。あまり時間が経たずに誰かに発見されたり、中途半端に終わると後遺症が残ったりするとそこには書いてあったこともあり、またロープに首をかけて足を浮かせようとした瞬間に、自分を育ててくれた両親や祖母などお世話になった人の顔が浮かんで、思いきれなかった。

1時間くらいそんなことをしていただろうか。疲れてしまい、母親と職場に連絡して、手術を受けることになったと伝えた。

入院前に母親には家の鍵を渡したので、YouTubeで見て作った首吊りロープと完全自殺マニュアルは怪しまれないよう事前に捨てた。健康ぶら下がり器は筋トレ用だと会話の中でさらっと言っておいた。

それから2ヶ月後に退院してまもなく、健康ぶら下がり器は粗大ゴミに出して捨てた。

 

あの日からはや1年。

あのとき死ななくてよかったと心から思う。

いまでもしょっちゅう仕事で憂鬱な日はあるし、毎晩のように頭痛がして再発したんじゃないかと思う夜もあるし、術前に比べれば機能もQOLも確かに低下したと感じるけれど、生きていていいと思えることも全然ある。

 

仕事で周りの助けを得ながら働けていること

仕事でプレゼン発表して上司によかったと言われたこと

大学の友達と旅行に行けたこと

中学時代の野球部の結婚式に行けたこと

時々仲の良い友人と電話で話すこと

映画、ドラマ、アニメをこの1年で60作観れたこと

本をこの1年で30冊読めたこと

本当に好きだと思えた女性に数年ぶりに出会えたこと

今日これから祖母と大学の友人に会いに金沢に行けること

 

もうすぐ新幹線が大阪に着く。大阪でサンダーバードに乗り換えだ。朝家を出た時は土砂降りで靴も濡れて最悪と思ったけれど、大阪は曇りのようだ。新幹線の中で靴もだいぶ乾いた。

人生山あり谷あり。人生楽あれば苦あり。

「人間が生きる目的とは、生まれた時の魂、人間性よりも、死ぬ時に少しでも高くするよう修行を積むこと。苦しいことは魂を高めるチャンスだと思ってそれを乗り越えること」

去年亡くなった稲盛和夫さんの生き方の中に書いてあったこと。入院中まだ話せなかった時に音読してて、最近また読み直した。

 

「ピンチはチャンス」

本当にそうだなあと最近つくづくと感じる。